かつてわたしたちは確かに勇者だった――『ドラゴンクエスト ユア・ストーリー』感想

かつてわたしたちは確かに勇者だった――『ドラゴンクエスト ユア・ストーリー』感想

こんばんは、オオヌキです。

『ドラゴンクエスト ユア・ストーリー』を見てきました。ネットで感想を検索すると、賛否両論が渦巻いています。やや、否のほうが多い印象でしょうか。

まず最初に言っておきたいのは、これから見る予定の方は、絶対にネタバレせずに行ってください。真相を知っているかどうかで、物語全体の見え方がまるで変わってきます。そして自分で見た感想を大切にしてください。たとえ「否」のほうが多くても、自分が「賛」と思ったのなら、それが真実です。

あらかじめ言うと、わたしは「否」です。それも強烈に「否」。でも決して、この映画を楽しんで見ている人への「否」ではありません。あくまで映画そのものに対してです。そこは誤解しないでください。映画の賛否は喧嘩する材料ではありません。

 

映画は、奥さんとふたりで見にいきました。「ドラゴンクエストⅤ 天空の花嫁」が大好きなわたし。その物語がベースにあるなら間違いなくおもしろいと確信していました。予告だけで、あのシーンがあるのか!あのシーンもあるのか!とワクワクしっぱなし。

奥さんはドラクエⅤ未プレイです。だからこそ見せたかった。映画の短い時間でどれだけ描けるかわかりませんが、少しでもあの感動を味わえるはず。味わってほしい。だってあのドラクエⅤですよ!

さて、その結果はどうだったのでしょうか……

 

超注意!!これからの文章は、映画のネタバレを含みます!!閲覧にはご注意ください!!

 

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いやー……、なにから話しましょうかね。

とりあえず話の流れをおさらいしたいのですが、ここで説明すると長くなるので、あらすじや衝撃のクライマックスなどを詳しく知りたい方はこちらのブログをご覧ください(【ドラクエ映画】ドラゴンクエスト ユア・ストーリー感想【ネタバレ】)。

今回の記事を書くにあたって大いに参考にさせていただきました。映画の1から10、すべてが書き込まれています。

 

 

いきなりネタバレしますね。

超ざっくり映画の真相を書くと、全部作り物です。

現実世界でゲーム(VR)に興じている青年が主人公。今までの冒険も数々の出会いも、「全部ゲームの世界でした」と発覚するのがクライマックス。「これゲームだよ。大人になれよ」という黒幕(ゲーム世界を破壊するウイルス)のメッセージに対し、ワクチンであるスライムの活躍もあり、「ゲームとはいえ、そこでの体験や出会った人々は真実なんだ」と主人公は悟り、映画は終わります。

なおウイルスやワクチンに対する説明はほぼゼロです。ほぼというよりまったくのゼロだったかもしれません。

大筋はこうでしたが、あくまで自分の解釈なので、間違っていたらすみません。というのも、このクライマックスが展開されている間、ずっと、こんな顔だったんです。

( ゚д゚)ポカーンで頭に内容が入りませんでした。

 

このクライマックスまでの展開は本当に良かったんです。ドラクエの世界観がCGで見事に再現されていました。物語が省略されるのも想定内です。あんな長い話を一本の映画におさめるには、物語のダイナミックな再構築が必要だったのでしょう。その結果として、数々の珠玉のエピソードが削られるのもしかたないと思います。

本音はもっと書いてほしかったですよ。あんなうっすい描写で感情移入なんてできません。ブオーンはいいから娘だせよ!なんで娘がいないんだよ!と、何度も思いました。ドラクエⅤは4人家族(パーティ)に意味があるんだよ!なんでそこ削ったんだよ!と憤慨しました。娘ラブなのです。

ただ、ゲームと映画の相違点を見つける楽しみがあったのも事実です。「あーそこ削っちゃったか」「お、これは知らない展開」などとワクワクしました。戦闘シーンもスピード感があってよかった。なにより、あのすぎやまサウンドが映画館で聞けることですべてを許せてしまえます。

でも許せない展開が起きた……。まさかドラクエの映画でこんなに落ち込むとは思いませんでした。

 

 

映画を見終わり、呆然とする自分に奥さんは聞きました。

「ドラクエⅤってこういう話なの?」

なにも言えませんでした。どこから話せばいいのか、どこで世界が変わってしまったのか……。奥さんは、「意味がわからない」と言いました。たぶんそれが率直な感想です。正直わたしも説明できません。ストーリーがぶつぎりで、感情移入する前に次のシーンにいってしまう。そしてあのラスト。わけがわからなかったと思います。

今回の映画には、ユア・ストーリーという副題がつけられています。『天空の花嫁』ではない。だから決してⅤではないのです。確かにキャラクターやストーリーはⅤをなぞっている。でも、Ⅴをそのままやるとはだれも言っていない。こんな結末を用意した製作者を責めたとしても、「Ⅴをやるなんて言ってないでしょ?」と言われてしまいます。

だから、「Ⅴはすばらしいからこの映画もすばらしい」という思い込みで奥さんを誘ったのは、浅はかだった。今はそう反省しています。そう思わないとやってられません。

 

 

ユア・ストーリーという副題についてもう少し話をします。

最初に聞いたとき、なんてすばらしい副題なんだろうと思いました。ユアストーリーこそ、ドラゴンクエストそのものだと思ったからです。

ドラクエの主人公は基本的になにも話しません。名前も自分でつけられます。だから、すごく感情移入できた。台詞なき主人公の台詞を、自分の言葉に置き換えられたのです。

ドラクエの世界で、主人公は自分自身です。確かにあの世界でわたしたちは勇者だった。魔王を倒す勇者だった。

でもゲームはゲームです。リセットボタンを押したらそこで途絶える。どんなにレベルをあげても、どんなに仲間を集めても、魔王を倒す武具を身に着けても、現実の世界では役に立たない。

それでも、わたしたちは夢中になれました。なぜか。ゲームの世界が魅力的だからです。そこで生きるキャラクターも魅力的で、血肉をもって動いていた。

もし、そんな世界の住人になって心から楽しんでいるときに、「これは作り物ですよ。早く大人になりなさい」と言われたら、その世界を愛せるでしょうか。そんな世界で勇者になって楽しめるでしょうか。その言葉がでた時点で、世界は崩壊します。もう愛せません。だからこの映画は愛せないんです。

 

ゲームは作り物です。わかりきってます。わかりきってゲームの世界にいます。嫌でもゲームが終われば現実に戻る。嫌でもキャラクターと別れる。嫌でも自分が勇者でないと知る。人に言われなくても、わかるんです。わかるしかないんです。最終的には現実に戻るしかないんです。

だから、最後までその気分を味わせてほしかった。少なくとも、今回の元となったドラクエⅤはそうだったのですから。

 

 

ゲームの話をそのままやってもしかたない。映画ならではのことをやる。そんな製作者の意図は理解できます。でも、それならあくまで、ドラクエの世界観のなかで挑戦してほしかった。たとえば、ミルドラースを倒した後さらに強敵がでてくるとか、デボラのような新キャラクターをだすとか、パパスとのエピソードを厚くするとか、膨らましようはいくらでもあったはずです。

今回の「ゲーム落ち」は、はっきり言えば、ドラクエである必要性を感じません。どんなゲームにもあてはまるし、どんな創作物にもあてはまる。そんな「浅はかな」オチを、この映画にぶつけてきたことに失望しました。

ドラクエの良さのひとつは、話のわかりやすさです。なのに奥深い。それが、わかりにくく、浅はかなストーリーになってしまった。愛せない世界になってしまった。あんな魅力的なストーリーとキャラクターがいたのに……。残念です。ただただ残念です。それがこの映画に対するわたしの評価です。

 

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映画の帰り道、ドラクエⅤのストーリーを奥さんに語り続けました。ドラクエⅤが「意味がわからない」と思われたくなかったんです。本当はこんなにすごいんだよと熱弁しました。ゲマを倒したあとはこうで、ミルドラースはこうで、エンディングはこうで……。それを聞いていた奥さんは言いました。

「本当に好きなんだね」

そう……、本当に好きでした。ドラクエⅤはシリーズで一番好きな話です。最初はもちろんSFC。それからリメイクされるたびにプレイしました。思い入れが特に強いゲームなんです。

その思い入れが、目をくらませている自覚もあります。本当に好きなのはわかったけど、映画は映画として楽しめばいいのに。奥さんの言葉にはそんな意味があったのかもしれません。確かに、ドラクエ映画ではなく、一映画としてみれば、そのオチに膝を打ったかもしれません。実際に満足した方も多いと思います。

 

でもわたしはどうしても受け入れられませんでした。もう、過ぎ去る記憶のひとつです。

 

あのとき、わたしたちは本物の勇者でした。味方も敵も世界も、すべてがわたしを勇者にしてくれました。「これは作り物ですよ。早く大人になりなさい」なんてだれも言わなかった。だから勇者として世界を救えた。本気で世界を愛せた。その世界を破壊する敵を本気で憎めた。

空想の世界とはいえ、その本気の感情は、現実世界の力になります。それもこれも、最後の最後まで「空想の世界を作り上げてくれたみんな」のおかげ。そんなみんなに出会えたこと、そんなゲームに出会えたこと、改めて感謝したいと思います。

わたしを勇者にしてくれてありがとう。こっちの世界じゃ勇者じゃないけど、世界も救えないけど、なんとかがんばってるよ。またそっちにもいくから。そのときはよろしくね。

 

よし、ドラゴンクエストⅤ、やり直そう。

ミルドラースを家族でぶっ倒すぜ!